「送電線」タグアーカイブ

東北電力南山形幹線建設レポート4

仙台は朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。秋も深まってきましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

最近はなにかと忙しくブログ更新も鉄塔追っかけもできていませんでしたが、久しぶりに南山形幹線の建設現場に行ってきました。

dsc_0047

はじめに訪れた西山形変電所では、南山形幹線の最終鉄塔がすでに完成していました。

dsc_0005

DSC_1218

南山形幹線最終鉄塔 下は4月の同じ場所

最終鉄塔の向こうではもう1基の鉄塔が完成していて、さらに奥の鉄塔は今まさに組み立てているところでした。

dsc_0013

南山形幹線の電線授受施設はまだ着工しておらず、資材置き場となっていました。今後は鉄塔が完成次第、工事に移るものと考えられます。

dsc_0024

山形県道7号線沿いのNo.43鉄塔とその前後の鉄塔はすでに完成していて、電線の架線作業がすでに終了していました。

dsc_0070

DSC_1227

No.43鉄塔と、No,44鉄塔(奥) 下は4月の写真

ちょうどNo.42鉄塔の真下に巻き上げ機があり、ここから電線を送り出していたようです。

dsc_0027

dsc_0064

DSC_1223

No.42鉄塔。10月の時点ではNo.41鉄塔が完成している。下は4月の写真

片側にしか電線がないのが、手持無沙汰な感じですね。

そこから山の区間にかけてはすでに電線が張り終わり、ジャンパ線もすでに取り付けられてる鉄塔が多くみられました。もうすでに基幹送電線の風格が漂っています。

dsc_0086

dsc_1235

山間を抜ける南山形幹線。下は4月の写真。

そこから起点側に移動し、前川ダム堤体から朝日幹線との分岐方面を撮影しました。昨年の9月と比較すると、鉄塔が完成し電線も張られもう営業していてもおかしくない雰囲気となっています。

dsc_0118

DSC_0669

すでに去年の11月時点で完成していたNo.3鉄塔やNo.4鉄塔もジャンパ線の設置を待つのみとなっています。

朝日幹線との分岐部分は、南山形幹線との接続が完了していました。500 kV級送電線の分岐ということで、とても迫力のある外観となっています。

dsc_0123

現在分岐部の朝日幹線No.267鉄塔直下では東北縦貫道の建設が行われています。開通した暁には、車窓のすぐ脇で500 kV送電線の分岐を見ることができるでしょう。

いよいよ電線が張られ、現役の送電線らしさが出てきた南山形幹線。

今しか見ることのできない光景を、これからも記録していきたいと思います。

 

東京電力黒部幹線

今回は帰省の途中に立ち寄った、東京電力黒部幹線について紹介します。

DSC_0025

黒部幹線は富山県の愛本変電所から長野県を経由して東京に向かう送電線路です。

途中長野から群馬に抜ける国道299号線の十石峠を越えていきますが、この場所では道路脇に黒部幹線の水平一回線鉄塔が二つ建っています。

DSC_0037

近づいてよく見ると、建設は昭和2年で実に80年以上も電線と人々の暮らしを支え続けていることになります。

DSC_0035

片方が甲でもう一方が乙の記号が与えられています。

長野県側の麓では、黒部幹線と安曇幹線一号が交差する部分もありました。どちらも長野の電源地帯と首都圏を結ぶという使命を帯びた送電線です。

DSC_0020

十石峠のある国道299号線は、道幅が大変狭く酷道としても有名です。訪問の際にはどうぞ安全運転で鉄塔に会いにいっていただきたいと思います。

東北電力宮城変電所

今回は東北電力宮城変電所について紹介します。

DSC_0421

この変電所は2 75kV送電線が4系統、500kV送電線が2系統も集まる要所となっています。宮城県北の拠点となるこの変電所に接続される送電線について見ていくことにしましょう。

まずは変電所入口がある北側です。こちらには275kV宮城幹線・鳴瀬幹線・奥羽幹線が接続されています。変電所入口と送電線の入り口がほとんど同じなので、取付道路から迫力ある光景を見ることができます。

DSC_0426

 

275kV宮城幹線

DSC_0427

手前から275kV鳴瀬幹線、66kV荒雄線、275kV奥羽幹線

宮城幹線は仙台市泉区の仙台変電所、鳴瀬幹線は石巻市の石巻変電所、奥羽幹線は秋田県の羽後変電所をそれぞれ結んでいる重要な送電線です。

東側には66kVのローカル線が集約されています。一つだけ、東北電力池月発電所を結ぶ荒雄線が遮断器・開閉器をこちらに置きながら地下ケーブルで北側に向かい、鳴瀬幹線と奥羽幹線の間で顔を出しています。

DSC_0440

 

接続されているのは154kV大崎線、66kV高清水線、66kV古川線、66kV中新田線、66kV宮崎線。

そして南側には275kV陸羽幹線が接続されています。

DSC_0455

こちらは新庄変電所を結んでいて、山形幹線とともに山形県の内陸に電気を供給する役割を担っています。先の震災では、宮城変電所の被災によりこの陸羽幹線が使用できなくなったため、山形県内の停電復旧が遅れてしまいました。その対策が、前回紹介した南山形幹線です。

そして西側には500kVの北上幹線と青葉幹線が接続されています。

DSC_0468

竣工が21世紀に入ってからということで、引留めの鉄構以外は全て絶縁性のSF6(六弗化硫黄)ガスで満たされた気中配管で構成されています。このようにすることで、相間の距離を短縮できるためコンパクトに配置することができます。また構造上の弱点となる割れやすい碍子を使わなくなるので、地震に強いというメリットも有ります。

DSC_0483

しかし、僅か数十センチで500kV送電線と大地電位が接近しているわけですから、その間の電界の強さは大変なものだと想像されます。

東北の送電網の中枢である宮城変電所、いかがでしたでしょうか。

この変電所は周囲を楽に一周でき、フェンスより高い位置で構内を見ることが出来る場所が多いので、大変観察しやすいものとなっています。見学の際には虫や動物に気をつけてご鑑賞ください。

東北電力南山形幹線建設レポート1

今回は建設中の南山形幹線についての記事です。

DSC_0147

南山形幹線は山形県上山市を通過する朝日幹線No.267鉄塔から分岐し、山形市西部の西山形変電所を結ぶ500kV対応送電線です。

この送電線の建設理由は、東日本大震災にさかのぼります。津波で太平洋側の発電施設がやられてしまった東北電力では、新潟からの送電が一縷の希望となりました。しかし新潟からの電力を通せる275kV送電線は、山形中央部をスルーして一度宮城側の西仙台変電所に抜け、そこから北上し宮城変電所を経由して新庄変電所まで行かないと山形県中央部まで繋がりません。震災当日、山形県の送電設備の損傷は軽微でしたが、宮城県の宮城変電所の被害が大きく山形県側でも大規模停電が発生しました。主要な275kV送電線と変電所の配置を図に示します。オレンジ破線が南山形幹線です。

図2

この教訓を活かして、宮城県を経由せずに山形中央部に電力を供給する使命を帯びて建設されるのが南山形幹線です。これによって日本海側の275kV送電線が繋がり、秋田方面との融通もしやすくなります。

比較的仙台から近いということもあって、建設の様子を継続して見て行きたいと思います。

6月14日の西山形変電所の様子です。目立った工事は行われていませんでした。北側の部分に500kV対応山形幹線が接続されているので、南山形幹線もこちら側のスペースに接続されると考えられます。

DSC_0108

変電所の南側を走る山形県道17号線では、No.44鉄塔の建設が始まっていました。

DSC_0128

その一つ起点よりのNo.43鉄塔建設現場には取付道路が新しく敷設されていたのが印象的でした。またNo.42鉄塔へ資材を運搬する索道が設置され、有力な輸送手段が限られる送電鉄塔建設ならではの設備を見ることができました。

DSC_0123

 

場所はとんで南山形幹線の起点部分を見ていきます。左に見えるのが南山形幹線が分岐する朝日幹線N0.267鉄塔です。かなり手前から立ち入りが制限されています。遠目に見たところ、資材の搬入をしている段階のようです。どのように分岐していくのか楽しみですね。

DSC_0152

 

このすぐ近くでは、東北縦貫自動車道の建設も進んでいます。完成すれば山形県の南北の移動が大変楽になるこの高速道路、こちらの建設状況も気になるところです。

DSC_0148

東北電力大堀線

今日は仙台市青葉区内で完結する、コンパクトな66kV大堀線を紹介します。この大堀線は距離にするとたったの10km程なのですが、起点は大正8(1919)年運転開始の大堀発電所、終点は明治21(1888)年運転開始の三居沢発電所という、歴史の重みが感じられる送電線路です。

DSC_0001

起点の大堀発電所から見ていくことにしましょう。この発電所は珍しいことに、仙台市によって建設されています。

DSC_1691

なぜ仙台市が電気事業を行っていたのか? と疑問に思った方も多いでしょう。実は、仙台市の電気事業は水道事業と密接な関係があったのですが、これは回を改めてお話することにします。

大堀発電所を出た大堀線は一度河岸段丘を一段登り、中原浄水場の調整池の横に出てきます。そこで大倉線と袂を分かつと一路東へ向かっていきます。聖地・定義山に続く県道55号線と平行して進んでいくと、高野原地区の南を通過し国道457号線との交差があります。

DSC_1530

この区間の大堀線の送電鉄塔は間に垂直な部分を挟むという手法で嵩上げされていて、まるでロケットみたいなシルエットの鉄塔です。

DSC_1766

457号線と交差した後は進路を南東に変えて東北自動車道と北環状線を跨ぎ、ついでに仙台幹線と交差して葛岡霊園を横切ります。DSC_1360

この時仙台変電所からの66kV国見支線と合流し、2回線鉄塔となって三居沢発電所裏手の山から接続されます。

短い路線ながら、歴史あり・嵩上げ鉄塔あり・合流ありのなかなかおもしろい路線です。自転車でもたどれますので、気になった方は是非起点から終点まで追いかけてみてください。

東北電力仙台幹線

 

今回は仙台変電所の記事で触れた仙台幹線について紹介していきます。

仙台幹線は秋保温泉の西側にある仙台西変電所から、仙台変電所までを結ぶ275kV2回線送電線です。

DSC_0015

 

この送電線は今でこそ短距離の線路ですが、昭和34(1959)年の竣工当時は仙台変電所と只見川源流近くの本名変電所を結ぶ亘長169kmの大幹線でした。これにより田子倉発電所を挟んで新潟と仙台が結ばれることとなり、東北電力全体の系統連絡ができるようになるという画期的な運用開始当初は140kVで使用されていましたが、翌昭和35(1960)年6月の仙台火力2号機の運転開始とともに275kV運用となりました。

DSC_0054

 

青葉区中山の象徴的存在である中山大観音と仙台幹線。

東北初の超高圧送電線ということで、建設のための調査は念入りに行われました。昭和31(1956)年に地上調査とヘリコプターを使用しての空中調査を全線に亘って行い、積雪や着氷の状態を始めとした詳細なデータを得て設計に反映しました。ちなみに国内で最初に電力事業へヘリコプターを導入したのは東北電力です。この新しいものを積極的に導入するあたりは、初代会長の白洲次郎氏の影響がうかがえます。

ところで、本名仙台線が通過する蔵王は樹氷が冬の風物詩となっています。これは多量の過冷却水滴が枝に付着し、凝固して成長していくものです。しかし、これは送電線にとって大敵となります。付着した氷の重みで断線したり、風で揚力が発生すると浮き上がって上の電線に接触したりしてしまいます。

この影響を把握するために、米沢・喜多方の大峠と七ヶ宿の稲子峠に模擬送電線を設置して2シーズンに亘って越冬観測を行いました。大変な念の入れようです。

興味深いことに、この実験の報告がインターネット上に公開されています。(http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1961/ex43/1961_ex_43_09.pdf)

気になる結果は、「相間スペーサを入れることで風下側の風荷重が10%ほど低下すること」「着氷は最大200mmほどになり、そのときの荷重は無着氷時の5倍・風荷重は3倍になる。しかし200mm以降は剥がれ落ちたり飛ばされたりするのでそれ以上成長することは考えにくい」というものでした。

この模擬送電線の設置場所ですが、現在は放棄された国道121号線旧道近くにあるため、残念ながら近づくことはできません。しかし峠に向かって高度を上げていく本名仙台線(現東北幹線)の勇姿を見ることができます。

DSC_2915

建設中の本名仙台線の鉄塔。東北地方電気事業史p.640-p.641の挿入写真。腕金や電線の様子が不思議な鉄塔です。気になる…

現在本名仙台線は本名変電所~米沢変電所が東北幹線、米沢変電所~西仙台変電所が蔵王幹線、西仙台変電所~仙台変電所が仙台幹線となっています。今は火主水従の連携という役割はありませんが、東北における超高圧送電線の先駆けとして末永く活躍して欲しいです。

参考:東北地方電気事業史

東北電力仙台変電所その3

今日は仙台変電所の東側と北側に接続されている送電線を紹介していきます。DSC_0527

手前の4回線鉄塔は上段が154kV代ケ崎線1,2号、下段が錦町線1,2号です。代ケ崎線は七ヶ浜町の仙台火力発電所まで向かいます。これが仙台変電所竣工当時、もっとも重要な火力電源を結ぶ送電線でした。錦町線は鶴ケ谷変電所で地下に潜ります。しかしその後はどこに向かっているのかは把握していません。おそらく名前からして錦町近くにある花京院変電所に最終的に到達してるのではないでしょうか。

変電所の北東には、154kV陸前幹線と275kV仙台港西線が接続されています。

DSC_0535

この陸前幹線、片側の1回線が接続されていないという変わり者です。大崎変電所までの路線と推測されますが、ちょっと要調査な送電線です。

仙台港西線は後述する仙台火力A線と275kV4回線となって仙台港変電所に接続されています。

DSC_0534

下段が仙台港西線で、大きく回りこむ鉄塔が特徴的ですね。

変電所の北側には275kV新仙台火力A線1,2号が接続されています。上段手前に伸びているのが本送電線です。

DSC_0669

こちらは変電所を出た後に宮城県民の森方面へ西進し、利府を通って多賀城市から仙台港にある新仙台火力発電所を目指しています。丘陵地帯を通る区間では山頂を結ぶように送電線が立っていて、さながら緑の海に浮かぶ島々を飛び石のように伝っていくようで面白いです。ちなみに手前に見えているのが陸前幹線です。

DSC_0693

 

明日は変電所の北西側に接続されている送電線の紹介と、本命の仙台幹線(旧本名仙台線)の現状をちょっとだけ述べる予定です。

 

東北電力仙台変電所その2

今日は仙台変電所に接続されている送電線路を紹介します。

DSC_0203まずは南から、運転免許センターの方から見たアングルです。

左側2つの矩形鉄塔は、それぞれ左から66kV国見支線、地下鉄八乙女線、堤通線1号、堤通線2号です。これらの送電線はこの先4回線鉄塔となり、仙台市地下鉄南北線八乙女駅まで向かいます。

DSC_1398

駅に着くと地下鉄八乙女線は地下ケーブルになり、駅内部の変電所に繋がります。残った3回線は水の森公園を通りぬけ、堤通線1,2号だけが水の森3丁目交差点近くの荒巻変電所に接続されます。堤通線はこの後地中を進み、堤通変電所から都心部に電力を供給しているようです。国見支線は貝ヶ森、国見と進み、最終的に葛岡霊園の中で大堀線と接続されます。

先程は見にくかった逆側を見てみましょう。DSC_0204

手前の1回線鉄塔が岩切線、次の矩形鉄塔が仙宮線1,2号です。こちらは変電所を出た後に3回線矩形鉄塔となり、免許センター内を横切って鶴ケ谷変電所に向かいます。鶴ケ谷変電所では仙宮線のみ接続という器用なことをしていました。左右の2回線が仙宮線で、最上段横3本の岩切線は接続されていません。

DSC_1409

その後利府街道と4号バイパスの交差点までは一緒なのですが、仙宮線がここで南に転進し小鶴新田変電所に接続されます。

DSC_0133

仙宮線の終点は苦竹変電所のようです。一方の岩切線は今度は代ケ崎線と一緒になって新幹線を越えますが、途中から別れて岩切に向かうようです。こちらの終点はまだ調査中です。