「クルマ」カテゴリーアーカイブ

牡鹿半島コバルトライン

 11月の三連休を利用して、仙台に行ってきました。私が東北を離れてから初めて2泊することになったので、いつもより余裕があることから少し離れた場所へも行ってみようと思い、学生時代の定番ツーリングコースだった牡鹿半島のコバルトラインへ行きました。コバルトラインは太平洋へ突き出た半島の稜線部をなぞるように先端まで伸びており、入り組んだ浦々と青い海面が時折覗く、とても眺めのよい道です。適度な曲率とリズムを持った曲線が続き、ただゆっくり流すだけでも気分が高揚してきます。 私が最後にコバルトラインを訪れたのが2017年の9月だったので、およそ2年ぶりの訪問となりました。

コバルトラインから望む太平洋

 朝6時にホテルを後にした私は、クルマに火を入れて一路東を目指します。仙台東部道路から三陸道へ入り、石巻河南インターで降りたあとは牧山トンネル経由で渡波まで出てきました。このルートは、仙台に住んでいた時代に幾度となく通過した定番コースです。
 初めて女川に行ったのは2012年だったのですが、ちょうどその時は舗装が壊れていてコバルトラインを走ることが出来ませんでした。そんな記憶を呼び起こしながら、よくここまで復興したなという感慨に浸りつつ走ります。途中、小乗浜(このりはま)方面へ向かうバイパスの工事をしていたのが、2年前から大きく変わった箇所でした。

2012年12月の御番所山公園ゲート。全面通行止めだった。

 女川町側の入り口から最初に到着する展望スペースへは8時頃についたので、少しずつ空の青さが深まっていく時間帯でした。そこを過ぎると、海はきれいに見えても駐車スペースがないという状態が続きます。結局半島の先端にある御番所公園までノンストップで着いてしまいました。公園につくと、私以外には先客一人のみで、非常に静かです。まず展望台に上がり金華山を望むことにしました。

金華山。標高はおよそ400m。

 離島である金華山は、3年連続でお参りすると以降の人生でお金に困らないという言い伝えがあります。このご利益を得ようと遠方からでも信心深い人達が参拝するそうです。ちなみに、近くの鮎川浜から連絡船が頻繁に出ていて、20分足らずで行くことが出来ます。
 島を眺めてしばしうっとりしたあとは、太平洋に目を向けます。もうそこは外海で、白波が湧き遥か遠くのアメリカまで見えそうな気がしてきました。

 すると、視界の真ん中をゆっくりと動く船影があります。どうやら旅客船のようです。もしやと思ってダイヤを調べると、苫小牧を前夜に出発した太平洋フェリーの「きたかみ」でした。最後にフェリーに乗ったのはいつだっただろうかと思いながら、その姿をカメラに収めました。

昨夜のうちに北海道の苫小牧を出発した太平洋フェリーの「きたかみ」。

 しばらく船を見送ったあと、半島の東側、石巻や仙台がみえる方向にカメラを向けます。夏になると全く見えませんが、すこし肌寒い晩秋の朝であったことから、仙台火力発電所だけでなく都心部に立つビルや長町のたいはっくるまで望むことが出来ました。

写真中央部の白っぽい場所が仙台都心部。

 御番所公園でのんびり過ごしたあと、宮城県道2号線で鮎川浜を経由しながら女川市街地へ向かいました。途中県道を通って半島の北側に向かい、女川原子力発電所PRセンターを横目に小屋取浜(こやどりはま)に寄り道しました。ここは女川原子力発電所を海から見ることができる素晴らしい場所で、私のお気に入りの場所です。

再稼働を間近に控えた東北電力女川原子力発電所。

 当時はバイクで来ていましたが、クルマで訪れると過ぎた時間の長さを感じてしまいます。

お気に入りの場所である小屋取浜。嵩上げされて以前よりも海面との距離が遠くなった。


私が2015年に訪れたときには、ちょうど斜面の整備事業をしていたのですが、2019年はその工事も終わってスッキリした姿を見せていました。夏には海水浴を楽しむ家族連れも見られましたが、11月の頭のこの頃には数人の釣り人が糸を垂らすのみでした。

 小屋取浜を後にした私は、県道41号線を走って女川市街地へ移動しようとしましたが、五部浦の先が通行止めになっていて通れませんでした。そこで、もう一度コバルトラインに戻って市街地に戻り、祝日の駅前商店街をブラブラしました。もう時刻は10時に近くなっていましたが、少し冷えた日曜日ということもあってか人はまばらです。

女川駅前商店街。駅から海に向けて緩やかに下っているのが特徴。

 そこで、暖かい飲み物を買いたいなと思い立ちマザーポートコーヒー女川店に入ることにしました。カフェラテを購入したのですが、次は色々なブレンドを試してみたいと思います。

 帰路は東北道の渋滞を避けて磐越・常磐道経由で帰宅しました。
 久しぶりにコバルトブルーの海に浮かぶ金華山を見ることが出来たので、とても充実した仙台旅行となりました。

コバルトブルーの五部浦湾から望む女川市街地。

東京オートサロンに行ってきた話

 1月12日に、幕張メッセで開催された東京オートサロンに行ってきました。その中でも気になった車両の感想を3つ書いて行きたいと思います。

1. マツダ3

 東京オートサロンは、チューニングカーの祭典という側面が色濃いイベントです。しかし、近年企業の出展ブースも充実してきており、特にマツダは新型マツダ 3(日本ではアクセラで販売中)の本邦初公開の場としました。

流麗な曲面を描くマツダ3 ハッチバック

 このマツダ3は、次世代のデザインと 技術を牽引するモデルとして登場しました。まるでモーターショーのコンセプトカーのような佇まいに加えて、世界初となる圧縮着火エンジンSKYACTIVE-Xの搭載が予定されています。

 デザインの素晴らしい箇所を挙げるとすれば、フロントフェンダーからドアパネルを優雅に横断する局面と、強く絞り込まれている凹面です。プレスラインに頼らない有機的な造形は、これまでの日本車と一線を画す印象を与え、大胆な凹面はヨーロッパ車とも違うマツダ独自の美学が現れています。できることなら購入したいクルマです。

ハッチバックはお尻がいい。
2. シビック バーサタイリスト

 ホンダ車の純正オプション品を開発し、スポーツブランド「Modulo」を運営するホンダアクセスも出展していました。

 私の目を惹いたのが「シビックバーサタイリスト」コンセプトで、低く構えたかっこよさが特徴のハッチバックモデルを流行りのクロスオーバースタイルにしたものです。フェンダー部を明るいシルバーとしているのが軽快感を出していますね。そして黒いルーフが全体を引き締めていてスマートな印象を受けました。

フロントグリルがメッキではなくシルバー塗装なのが特徴です。
車高もハッチバックと比較して上がっていました。
バンパーに埋め込まれた大型フォグランプも、SUVらしさの演出に一役買っています。

 ちなみに「バーサタイリスト」とは、なんでもこなせるスマートな人間という意味があるそうです。多芸な人ということで、都市部からちょっとした未舗装路まで走れるかっこいいクルマというコンセプトを体現している名前だと思います。

 と、ここまでべた褒めしていますが、当然ながら世界で一番かっこいいクルマは、自分が運転するシビックハッチバックだと思っています。猫を飼っている人は共感してくれるかもしれませんが、他人の猫をどんなに可愛いと思っても、自分の猫がやはり一番かわいいのです。クルマだって同じです。

 「主観にすぎない」「他にもっと優れたクルマだってあるだろう」「そもそもノーマルから外観いじってないよね?」という批判もあるでしょう。それはそうです。でも、自分のクルマがかっこいいと確信できるからこそ、他のクルマのいいところを手放しで褒めることができるのです。

3. 神電 七

 最後に、電動レースバイク「神電 七」について書こうと思います。これは伝統のマン島TTにおけるTT Zeroクラスに出場し、見事5連覇を成し遂げたマシンです。マン島TT(ツーリスト・トロフィー)とは、アイリッシュ海に浮かぶ小さな島で行われる100年以上の歴史を持つ公道レースです。一周60kmの狭い公道を、トップカテゴリーでは平均時速200km/h超を保って6周も走るので、超人的な精神力が求められます。 排ガスゼロのマシンで争われるTT Zeroクラスは 、1周のみのタイムトライアル形式です。

カウルが外され内部構造がよくわかる「神電 七」

 電動バイクとはいえ、最高速度は200km/hを軽く超えるマシンですから、モータも大きいものが使われています。インホイールモータでないのは、バネ下重量を軽くしてサスペンションの動作を軽快にするためでしょう。電動化されても、チェーンによって後輪を駆動している部分に親近感が湧きます。

モータは車体に取り付けられる。剥き出しで固定されたアース線が良い。
モータ軸から上にオフセットされた位置にドライブスプロケットがついている。

 スイングアームはモータのスペースを確保するために大きく湾曲しています。その昔2stエンジンが主流だった頃、排気チャンバーとの干渉を避けるために生まれたガルアームを彷彿とさせますね。大きな違いは、神電がカーボン製だということでしょうか。軽量化を狙い、フロントフォークもカーボンでできていました。

モータを避けて大きく湾曲したスイングアーム。
NSR500(1989)のスイングアーム。チャンバーを避ける造形が瓜二つ。

 バッテリー・制御回路・モーターも熱を持ちますから、それを冷やすための巨大なラジエターが前部についています。内燃機関と違って冷却水温が低いので、出力の割には面積が広く取られています。これは燃料電池車と共通する特徴ですね。

2系統のラジエータが、大きく場所をとっている。
4.最後に

 当日はすべての展示ホールを回ってきたので、かなりの距離を歩きました。同行者のアプリによれば、10km 以上歩いたとか。

 それと、チューニングショップやアフターパーツメーカーが多いこともあり、商品をその場で購入したり、個人でも商談に移れるようにしてある出展者が多かったのが印象的でした。

 今回初めて「クルマ好きの祭典」へ行きましたが、来年もまた参加したいと思っています。

下山発電所美術館

 前回は関電トロリーバスの記事を書きましたが、この日は長野県だけでは終わりませんでした。

 大町から北に向かい糸魚川へ抜けた私は、そのまま天険・親不知を越えて富山県の入善町へシビックを走らせました。
 目的地は下山(にぜやま)発電所美術館です。「発電所で美術館?いったいどっちなんだ…」と思う人もいるかもしれませんが、美術館なのでご安心ください。

下山発電所美術館の外観。一段下がっているところは、放水路を改装したのだろう。

 正確には、大正時代に建設された水力発電所を北陸電力が入善町へ譲渡し、現代美術館へ改装した施設です。

 クルマを降りて門に向かうと、右側に水車が並んでお出迎えしてくれます。この形はフランシス水車ですね。この段階でとんでもない施設だなという雰囲気を醸し出しています。

門松の一種だろうか。

 この美術館は、3基の水車と発電機が並んでいた建屋の内部を改装して展示スペースにしてあります。3基のうち入り口から最も奥にあった設備はそのまま残されていて、芸術作品だけでなく発電所設備も鑑賞することができます。

館内は広々とした空間が広がっている。これらすべてが展示スペースだ。

 通常は館内撮影禁止なのですが、今回は特別に作品制作者の意向でカメラを使うことができました。その厚意に甘えて、美術館内部を隅々まで撮影しました。

 この発電所美術館が素晴らしいのは、「水力発電所」という特殊な用途のために作られた建物を、最大限利用して展示の空間として利用している部分です。
 特に、水圧鉄管の開口部をそのままにして、奥にスクリーンを設置し映像作品を鑑賞できる場所にしている箇所は、自由な発想で活用しているんだなと感銘を受けました。

手前のお面が展示物なのだが、設置場所はむき出しにされた水圧鉄管の内部である。

 発電所内部の機器は大部分が撤去されていますが、1基の水車と発電機は保存されており、こちらにもしっかりした解説がついていて楽しむことができます。

1基だけ残された水車。外形は軸方向に長く、珍しい。

 この下山発電所は段丘崖の小さい落差を利用しているため、出力を上げようとすると流量を増やす必要があります。そこで、より大きな回転力を取り出すために、横軸フランシス水車を背中合わせにした「横軸二輪単流前口双子式フランシス水車」を採用していました。そのため、水車のケーシングが前後に長い独特な形状となっているのです。

関西電力旧八百津発電所の放水路にも、同じ形式の水車が設置されていた。
独・ホイト社で1925年に作られたそうだ。

 また、2階の奥は休憩スペースとなっているのですが、なんと系統連系用の機器が並ぶ中央に椅子があり、丁寧に解説も付属しているという充実ぶりでした。

落ち着きのある空間に思える。しかし、一部の人にとっては大興奮間違いなしだ。

 この美術館で最も衝撃を受けたのは、駐車場へあたかも当然のようにフランシス水車が鎮座していたことです。確かに駐「車」場ですから、水車があっても問題はないのでしょう。しっかり枠線の中に「駐車」されていて、腕も確かなようでした。

日本全国を探しても、フランシス水車と並べて駐車できる場所は少ないだろう。

 自分とは全く違う視点で発電所を捉えた施設に入ったことで、これまでにない満足感と楽しさを覚えながら美術館をあとにしました。

養老渓谷・鋸山訪問

 

お久しぶりです。

もう11月も終りとなりますが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。

私は三連休の初日に房総半島へ行ってきました。

最大の目的は洲崎灯台だったのですが、欲張って養老渓谷と鋸山も訪ねました。

朝9時近くになって紅葉目当ての養老渓谷につきましたが、三連休で親子向けのイベントが開催されており、クルマを止めることができません。仕方なくその先の観光センターに向かったところ、ちょうど紅葉谷という場所があったのでそこを目指してシビックを走らせました。

一部の樹だけが色づいていたものの、朝日に照らされた紅葉を撮ることができました。

朝早くに行くと混雑は避けられますが、光線状態として厳しい場合がありますね。11月初旬にも早朝の鳴子峡へ言ったのですが、カメラには厳しい条件でした。

その後は千葉県道81号線を走って最短で鴨川に抜けました。

房総半島はちょっとでも海岸線から離れると、山道になって運転が難しい道ばかりになる印象です。かなり幅が狭く、離合困難な道が何キロも続いていました。

国道128号線をしばらく走って道の駅和田浦で小休止をしたところ、すぐ隣の内房線和田浦駅に電鉄用変電所がありました。鉄塔が白く塗られていて、房総の青空によく映えています。ちゃんと電力要素は忘れてませんよ。

その後は国道410号線へ進路を取り、野島崎を回って相浜海水浴場にほど近い相浜亭でお昼をとりました。

さて、ウツボといえば「海のギャング」と恐れられる獰猛な生物ですが、メニュー曰く「今が旬!」らしくウツボ丼としてオススメされていました。大きな天ぷらとなって目の前に出てきたその身は淡白な味でしたが、皮との間にかなりの脂が乗っていてボリュームたっぷりでした。お吸い物もウツボのつみれ汁で、こちらもプリプリの歯ごたえと大柄なサイズの団子で、大満足の食事となりました。

お腹を満たした後は、本日の到達目標である洲崎灯台に向かいました

9月の初めに行った犬吠埼灯台と比較すると、ずっと小さく敷地も狭いものでした。あまつさえ端には家庭菜園(!)があり、引きの構図を取ることが困難で、ファインダーへ収めるのに苦労しました。

ひと段落して東京湾を行き交う巨大なタンカーやLNG船を眺めつつ眼下の洲崎漁港に目を向けたところ、沖合に使われていなさそうなコンクリート構造物をみつけてしまいました。

いわくありげだなと思っていたのですが、帰ってから太平洋戦争時の兵器である「震洋」の基地ではないかと知人から指摘がありました。

灯台をあとにした私は北上を続け、鋸山へは南側から有料道路を使って登りました。

鋸山登山道には強烈な上り勾配とコンクリートを吹き付けただけのトンネルがあって、なかなか刺激的な道でした。頂上付近では太平洋を一望できるスペースもあり、ところどころに植えられた南国風味のソテツも相まって異国のような雰囲気がありました。

クルマを降りてロープウェイ乗り場の方へ向かい、山頂から東京湾側を望みました。ちょうど久里浜と金谷浜を結ぶ東京湾フェリーが到着するところで、防波堤の中に入ってから転回し着眼するまでをずっとカメラで追っていると、仙台港の太平洋フェリーを思い出します。

その後はロープウェイが昇り降りする光景を撮影したりと、乗り物ばかり撮っていました。

有名な地獄のぞきですが、1時間ほど並びそうだったので諦めて大仏のところまで下りました。ところで、鋸山はとても脆い凝灰岩でできています。歩きながら崖に手をつくと、砂となって手についてくるほどの削られやすさです。なので、せっかく崖に彫った大仏像も長年の風雨によって形が崩壊し、近年大規模に手を加えた結果が今の姿なのだと解説にありました。

その後は東京湾アクアラインを通って帰路につきましたが、木更津料金所を通過する前から渋滞しており、登山で酷使した脚をさらにクラッチ操作で消耗しないように、のんびり一定の速度で走りました。

ゆっくり走ったおかげで、君津にある新日鐵住金の高炉群を見る余裕があったのは怪我の功名と言えるかもしれません。

海ほたるの時点で西の空は残照があるだけとなり、川崎で再び地上に出たときには、もう闇の中でした。最近は本当に日が暮れるが早いですね。

東京で友人と別れたあとは、アクアラインとは比べ物にならないくらいスムーズな常磐道で帰路につきました。

すべてが初めて訪ねた場所だったので、自らの知見が大きく広がったような気がする房総半島の小旅行でした。

 

燃料電池車「クラリティ FUEL CELL」試乗レポート 運転編

前回に引き続き、ホンダの燃料電池車であるクラリティ FUEL CELLのレポートです。今回は実際に運転した感想をレポートしていきます。

オプションのレザーシートに着座してみると、正面の大きな液晶画面に映し出された速度計とモーターの力行と回生を示す半円のバーグラフが現われます。また、フロントウィンドウ下部には速度計が投影され、少ない視線移動で現在の車速を確認することができます。

コンソール上のシフトボタンにはP, R, N, Dの4つのポジションがあり、いずれかを押すと表示画面上へ文字が表示されます。後退のけでRシフトに入れることが可能です。電気モーターで走る燃料電池車は変速という概念がないので、普通に走行している分にはシフトポジションを気にする必要はありませんでした。

コンソールにはSPORTモードがあり、このボタンを押すとアクセルの踏み込みに対してより出力の変化が鋭く対応します。また、アクセルを放したときの回生も通常より強くかかり、前へ荷重を移動させて気持ちよくコーナーに入ることが可能です。しかし、モーターがあまりに鋭敏に右足の動きに反応するため、よほど気をつけないと加速と減速が小刻みに入り交じり乗り心地が悪化してしまいます。狭い峠道を下る場面では重宝しました。

今回試乗したルートですが、ホンダカーズ台原店を出発したのち国道48号線を西へ向かいました。そこから北環状道路へ進み、途中芋沢の小さな峠を越えて国道457号線へ。また途中から大國神社脇へ逸れて、そのまま舗装林道を通過して大倉ダムまで抜けて定義如来で撮影タイムをとりました。

    • 街中~40km/h程度
      クラリティにはブレーキホールド機能があり、停止中は自動的にブレーキを保持しアクセルペダルを踏むと解除してくれるため、赤信号に頻繁に止められる市街地では大変便利でした。発進から息継ぎも不快な振動もなくスルスルと加速する感覚は、どんなに高級な内燃自動車でもまねできない上質なフィーリングで感動しました。一方で、少々の段差では突き上げるような感触がありました。それほど衝撃は大きくなく、一回で収束する揺れなのですが、これは1.9tにも及ぶ車重を受け止めるために足回りを固めた結果でしょう。狭い路地にも入りましたが、1875mmの車幅がありながらAピラーからボンネット先端までの長さが短くダッシュボードの位置も低いため、車幅感覚の把握は容易でした。

    • 郊外~6okm程度
      まず特筆すべきは車内の静粛性です。この速度になるとモーターのノイズはほとんど目だたないうえ、相対的に大きくなるロードノイズも非常に小さく楽に会話をすることができました。この速度域から、クラリティの持つハンドリングの良さが際立ってきます。まるでハンドルの中立が保たれているかのように、直進安定性が素晴らしいです。そこからハンドルを切っていっても、車重を全く感じさせない軽やかさと正確性で自在にクルマの向きを制御できて「思うまま操れる」という言葉のままのハンドリングでした。しかし、この速度域でも路面からの僅かな突き上げを感じることがありました。
    • 自動車専用道~80km/h程度
      高速道路こそクラリティの持つ車体とサスペンションが真価を発揮する場面だと感じました。60km/hから80km/hまで苦もなく加速し、さらに少し上の速度域でも非常に静かに走行できるので、長距離を移動したときの疲労は他のクルマと比較しても小さいでしょう。低い位置に抑えられたダッシュボードは前面視界の拡大に繋がり爽快感がありますが、高速走行での安心感も同時に両立しています。一般道では堅さが目立つ印象を受けたサスペンションですが、80km/hからはどんな衝撃も一回の揺動でいなし、常に安定した接地感を伝えてくる大変優秀な足回りであると感じました。

【まとめ】
今回ホンダの燃料電池車であるクラリティ FUEL CELLに試乗した結果、長距離を快適に移動できるグランドツーリングカーとして利用するのがこのクルマのもっとも優れた部分を味わえるだろうという感想を持ちました。事実、ホンダは燃料電池車がバッテリー式電気自動車よりも航続性に優れる点をいかして、長距離都市間輸送に焦点を当てているようです。もちろん街中で大人4人が乗るセダンとして何の不便も感じず利用できますし、それを可能としたパッケージが実現するということが、燃料電池車普及へ向けたステップがまた一つ進んだことを感じさせてくれました。

今後水素の効率的な生産・販売インフラがさらに整備された暁には、クラリティでめいっぱい遠出してみたいと感じさせてくれるクルマでした。

蛇足:水素ステーションに行ったのですが、日曜だったので閉まっていました。充填作業を見たかったのですが、残念。

燃料電池車「クラリティ FUEL CELL」試乗レポート 外観・装備編

今回は毛色を変えて、クルマのお話しです。

宮城県では自動車ディーラーに補助を出すことで、次世代の自動車と呼ばれる水素燃料電池車の貸し出しを行っています。排気ガスを出さず、走行時に出てくるのは水だけというエコカーを、4時間4,000円・6時間5,000円という価格で借りることができるのです。現在トヨタ・MIRAIが723万円、ホンダ・クラリティ FUELL CELLが766万円(リース販売)ということを考えると、これは破格と言ってもよい値段です。借りるにあたり複数の条件はありますが、これは一度乗っておきたいということで後輩と一緒に運転してきました。その時の感想をまとめていきたいと思います。

私が今回借りたのはホンダ・クラリティ FUEL CELLです。カテゴリとしては、高級セダンに分類されるでしょう。しかし、シビックセダンと同じように斜め前から見るとクーペのように見える流麗なルーフラインが特徴的で、先進的な雰囲気をまとっています。また、燃料電池車は大きなラジエータが必要なために巨大なグリルを設けたりしますが(MIRAIがいい例)、クラリティは前面開口部をいたずらに大きく見せないデザインとなっています。ちなみに、なぜ大きなラジエータが必要かというと、燃料電池セルの作動温度はガソリンエンジンほど高くならないため、冷却水温度が下がる分単位面積当たりの冷却効率が下がるからです。

ガソリン車と異なる部分としては、フロントフェンダー上部に燃料電池セルで反応した後の空気を排出するエアアウトレットがあるのが特徴的です。

ボンネットを開けてみると、今回からフロントボンネット内に搭載された燃料電池スタックがお出迎えしてくれます。カバー前部からフェンダー上のアウトレットへパイプが伸びているが確認できます。

興味深かったのが水素タンクの充填期限シールです。法律で15年間だけ使用できると決まっているので、この車体に搭載されるタンクは16年製だとういことがわかりますね。

燃料電池から排出される水の出口は、後部左側の奥にあります。ホンダの燃料電池スタックはトヨタのものに比べて作動温度が高いため、発生する水分の多くが気体となるので液体の水がドバドバでてくるといった感じではなかったのが印象的でした。ついでに写っているリヤのサスペンションアームは、軽量化のためすべてアルミ鍛造製になっています。

もう一つ外見で特徴的な部分は、後輪の一部を覆うスカートでしょうか。初代インサイトを思い出しますね。こちらはタイヤの前面まで回り込むものではありませんが、下半分は後輪前部から導入したエアカーテンを使って空気抵抗を下げているようです。

次に、内装を見ていきます。ダッシュボードは横に直線が入っており、解放感を強調するデザインとなっています。センターコンソールは上段にシフトボタンがあり、その下にはスマートフォンや小物を置けるトレイが設置されていて、うまく空間を利用しているなと感じました。特に下の小物入れのデザインは秀逸で、すぐ近くにUSB端子やHDMI端子があり、デバイスを接続しつつも安定した状態で置くことができるようになっているのはすごく便利ですね。エアコンは左右で温度が選べる仕様となっています。

運転席のシートはオプションのレザーだったのですが、腰と太ももを受け止めてくれて安心して座れました。正直この価格帯のクルマの座席に座ったことがほとんどないので、ここは自信をもって書けない部分です。シートは電動で、二つのプリセットポジションが選べるようになっていました。シートヒーター付きは寒い場所では重宝しますね。

後部座席ですが、基本大人2人がゆったり移動できて、緊急時に3人掛けにできるといった感じでした。この点MIRAIの後部座席はは2人と割り切っていますから、本当に「いつも乗るセダン」として使えるのという点ではクラリティに分がありますね。FFではありますが、剛性確保のためかセンタートンネルがあります。また、後部座席ではフロントシート下につま先が入るので、ゆったりと座れました。座席下と背面に二つの水素タンクがあるのですが、その存在を全く感じないパッケージングでした。

面白いのが後席上部に設けられた覗き窓です。リヤガラスが寝ているため、後方の視界を確保するために工夫がなされています。

トランクを開けると水素タンクの張り出しが目立ちますが、容量は同社のセダンであるアコードと同等なようです。大人2人が普段使いするには十分なスペースをもっています。

 

次回からは運転のレポートに移りたいと思います。