権兵衛峠の連絡線

 阿寺森林鉄道の廃橋を見学した後は寝覚発電所に向かい、国道361号線の権兵衛峠を抜けて伊那谷へ抜けました。この峠は中部電力と連系している関西電力の送電線も越えているので、移動と撮影を一度にこなせて一石二鳥です。

 今回の旅行で最も積雪のおそれがある場所がここで、日程が決まってから2週間は固唾を呑んで伊那の天気予報を確認するのが日課になりました。職場のOutlookに表示される天気予報まで伊那・飯田にしていたため、間違って傘を持って出かけてしまったことがあったくらいです。

 しかし、そんな心配も杞憂に終わり、路面がまったく濡れていない状態で通過することができました。
  峠の木曽側では高規格道路に取り付くランプのような道を通っていくことになり、飛騨方向へまだ見ぬ本線が伸びようとする野心を感じさせてくれます。
  権兵衛峠道路の基幹となるのが、およそ4.5 kmの権兵衛トンネルです。木曽山脈を貫いて作られたこのトンネルは、木曽と伊那を最短で繋ぎ、通年走行を可能にしたとてもありがたい存在です。

 峠を抜けて最初の集落に、目当ての鉄塔が立っていました。
関西電力 須原松島線(寝覚) No. 94鉄塔です。上段から下段に向けて腕が長くなる、独特な形をしています。

逆光にシルエットを浮かべるNo.94鉄塔。手前を横切るのは配電線だ。

 ここは山岳地帯ですから、着雪・着氷と風により送電線が上下に揺れたときに、相間で電線が接触するのを防ぐための設計でしょう。主材から腕に斜めに補強が入った、裾広がりの安定感があるシルエットです。この日は朝から曇りでしたが、3時過ぎからは太陽が顔を出して、青空が見えるようになりました。振り返った位置にあるNo.95鉄塔は、青空を背景に風雪に耐えてきた凛とした立ち姿を撮ることができました。

No.95鉄塔。主材から腕金に伸びる補強がよくわかるアングル。

次回はいよいよ天竜川の発電所を紹介する予定です。「電力王」が最後に携わった場所からスタートです。