関東地方は梅雨真っ盛り、すっきりしない天気が続く中皆さまいかがお過ごしでしょうか。仙台にいた頃は7月末が梅雨の時期で、考査期間がその憂鬱さに輪をかけていたのを思い出します。
さて、そんな時期にぴったり…ではないかもしれませんが桜のお話しです。
「わに塚の桜」をご存知でしょうか。山梨県韮崎市にある一本桜で、これまで郵政省のポスターやテレビドラマのタイトルバックとして多くの人の眼に止まってきました。
そんな桜になぜ私が着目したかというと、なんとすぐ隣に趣のある送電鉄塔が建っているからなのです。

その名も東京電力天竜東幹線で、長野の伊那松島から山梨を結び、そこから首都圏まで電気を供給する長大幹線の一翼を担っています。いつも使っている電気が、 発電所から桜を掠めて来ているのかもしれないと想像すれば、コンセントにプラグを挿入するだけで春を感じられるでしょう。
この日は首都圏に住む鉄塔マニアと予定を合わせて、早朝の中央自動車道をひた走り韮崎に到着しました。
着いたのは午前10時過ぎで、ちょうど満開になった桜の周りには、カメラを構えた人がたくさんいました。

ほとんどの人は構図に桜だけを入れるために試行錯誤していましたが、こちらは鉄塔がメインなので何のその。電線・人間どんと来いという意気込みで、歩きながら無造作に桜を撮っていきます。
この日は暖かいを通り越して少し暑く感じるような天気で、空が乳白色にかすんでしまいました。そのため、晴天でありながらも八ヶ岳を望むことができませんでした。順光を狙ってもちょっと色が弱かったのが残念でしたね。

どんどん近づいていくと、人がぎっちり詰まっていい画角を狙いにくくなります。また、多くの人が鉄塔のことを邪魔だと言っているのが聞こえてきました。しかし、私にとっては鉄塔が主目的なのです。むしろ鉄塔を桜と一緒に取り入れようと、積極的にいろいろな角度を試していました。

さて、鉄塔の話に戻りますが、名前は天竜東幹線No. 186鉄塔でした。真下は虎ロープで立ち入りが規制されています。しかし、すぐ先に撮影スペースがあったため、順光の送電鉄塔を正面から間近に見ることができました。腕金取り付け部の主材が垂直になっているクラシカルなデザインです。

はるか昔からこの地に暮らす人たちの生活を見守ってきた桜と、明治の近代化以降に現れた武骨な送電鉄塔。
今は鉄塔と桜が静かにたたずんでいますが、建設までにどんなドラマがあったのだろうかと思うと、想像が尽きません。
いつか大河ドラマになったりしないかなぁ、などと考えながら、梅雨空を眺めています。