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東北電力蔵王幹線

今回は東北初の超高圧送電線である本名仙台線を前身とする275kV東北電力蔵王幹線について紹介します。

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蔵王幹線は米沢変電所を起点として西仙台変電所へ向かう送電線ロです。今回は米沢変電所から見ていくことにしましょう。

米沢変電所はその名の通り米沢盆地の南端にある東北電力の超高圧変電所です。275kV級では蔵王幹線を始めに東北幹線、飯豊幹線、吾妻幹線が接続されていて要所となっているほか、複数の66kV送電線も接続され米沢市街地に電力を供給しています。

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西側が超高圧セクション、中央に変圧器、東側が66kVセクションという構成になっていて、左右対称に張り巡らされた母線群が大変美しい変電所です。蔵王幹線は変電所の北側に接続され、1号鉄塔で向きを変えて一路北東に向かいます。

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高畠町に入ると、国道399号線鳩峰峠を国道と一緒に越えていきます。

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いくら最短距離を採るとはいえ、メンテナンスは必要ですからアクセスしやすいルートを選んだ結果だと思われます。

鳩峰峠を越えて宮城県に入った蔵王幹線は、そのまま北東へ進みます。そして稲子峠を越えて、滑津大滝付近で国道113号線七ヶ宿街道と交差します。

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その後宮城県道51号線に沿って進み、蔵王PA西側で北に転進。川崎町支倉台を過ぎて仙台市に入ったところで再度西に向きを変え、西仙台変電所へと向かいます。ここで面白いのが仙台幹線との位置関係で、北から来た仙台幹線がなぜか南側となって蔵王幹線とともに西仙台変電所へ向かっていくのです。下は北側から撮った写真ですが、手前が154kV秋柴線を併架した蔵王幹線で奥が仙台幹線になります。

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ここは現地に行ってみて、なにか合理的理由が見つかるか調査してみたいところです。

 

 

東北電力仙台幹線

 

今回は仙台変電所の記事で触れた仙台幹線について紹介していきます。

仙台幹線は秋保温泉の西側にある仙台西変電所から、仙台変電所までを結ぶ275kV2回線送電線です。

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この送電線は今でこそ短距離の線路ですが、昭和34(1959)年の竣工当時は仙台変電所と只見川源流近くの本名変電所を結ぶ亘長169kmの大幹線でした。これにより田子倉発電所を挟んで新潟と仙台が結ばれることとなり、東北電力全体の系統連絡ができるようになるという画期的な運用開始当初は140kVで使用されていましたが、翌昭和35(1960)年6月の仙台火力2号機の運転開始とともに275kV運用となりました。

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青葉区中山の象徴的存在である中山大観音と仙台幹線。

東北初の超高圧送電線ということで、建設のための調査は念入りに行われました。昭和31(1956)年に地上調査とヘリコプターを使用しての空中調査を全線に亘って行い、積雪や着氷の状態を始めとした詳細なデータを得て設計に反映しました。ちなみに国内で最初に電力事業へヘリコプターを導入したのは東北電力です。この新しいものを積極的に導入するあたりは、初代会長の白洲次郎氏の影響がうかがえます。

ところで、本名仙台線が通過する蔵王は樹氷が冬の風物詩となっています。これは多量の過冷却水滴が枝に付着し、凝固して成長していくものです。しかし、これは送電線にとって大敵となります。付着した氷の重みで断線したり、風で揚力が発生すると浮き上がって上の電線に接触したりしてしまいます。

この影響を把握するために、米沢・喜多方の大峠と七ヶ宿の稲子峠に模擬送電線を設置して2シーズンに亘って越冬観測を行いました。大変な念の入れようです。

興味深いことに、この実験の報告がインターネット上に公開されています。(http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1961/ex43/1961_ex_43_09.pdf)

気になる結果は、「相間スペーサを入れることで風下側の風荷重が10%ほど低下すること」「着氷は最大200mmほどになり、そのときの荷重は無着氷時の5倍・風荷重は3倍になる。しかし200mm以降は剥がれ落ちたり飛ばされたりするのでそれ以上成長することは考えにくい」というものでした。

この模擬送電線の設置場所ですが、現在は放棄された国道121号線旧道近くにあるため、残念ながら近づくことはできません。しかし峠に向かって高度を上げていく本名仙台線(現東北幹線)の勇姿を見ることができます。

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建設中の本名仙台線の鉄塔。東北地方電気事業史p.640-p.641の挿入写真。腕金や電線の様子が不思議な鉄塔です。気になる…

現在本名仙台線は本名変電所~米沢変電所が東北幹線、米沢変電所~西仙台変電所が蔵王幹線、西仙台変電所~仙台変電所が仙台幹線となっています。今は火主水従の連携という役割はありませんが、東北における超高圧送電線の先駆けとして末永く活躍して欲しいです。

参考:東北地方電気事業史