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東北電力大堀線

今日は仙台市青葉区内で完結する、コンパクトな66kV大堀線を紹介します。この大堀線は距離にするとたったの10km程なのですが、起点は大正8(1919)年運転開始の大堀発電所、終点は明治21(1888)年運転開始の三居沢発電所という、歴史の重みが感じられる送電線路です。

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起点の大堀発電所から見ていくことにしましょう。この発電所は珍しいことに、仙台市によって建設されています。

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なぜ仙台市が電気事業を行っていたのか? と疑問に思った方も多いでしょう。実は、仙台市の電気事業は水道事業と密接な関係があったのですが、これは回を改めてお話することにします。

大堀発電所を出た大堀線は一度河岸段丘を一段登り、中原浄水場の調整池の横に出てきます。そこで大倉線と袂を分かつと一路東へ向かっていきます。聖地・定義山に続く県道55号線と平行して進んでいくと、高野原地区の南を通過し国道457号線との交差があります。

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この区間の大堀線の送電鉄塔は間に垂直な部分を挟むという手法で嵩上げされていて、まるでロケットみたいなシルエットの鉄塔です。

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457号線と交差した後は進路を南東に変えて東北自動車道と北環状線を跨ぎ、ついでに仙台幹線と交差して葛岡霊園を横切ります。DSC_1360

この時仙台変電所からの66kV国見支線と合流し、2回線鉄塔となって三居沢発電所裏手の山から接続されます。

短い路線ながら、歴史あり・嵩上げ鉄塔あり・合流ありのなかなかおもしろい路線です。自転車でもたどれますので、気になった方は是非起点から終点まで追いかけてみてください。

三居沢発電所

最初に紹介するのは、近所にある東北電力三居沢発電所です。

 

DSC_0465明治21(1888)年に宮城紡績会社が織機を動かすための水車に発電機を取り付け、出力5kWで夜間のみ発電を開始したのが始まりです。これが日本初の水力発電とされています。

その後明治26(1893)年に宮城水力紡績製糸会社と改名し、出力を30kWに増強して仙台電灯株式会社に供給を開始したのが東北における電気事業の嚆矢となりました。

そして明治32(1899)年10月に仙台電灯株式会社と合併し、明治41(1908)年市内に加えて付近町村の需要を満たすため、新たに600kWの発電所を新設しました。これが現在の東北電力三居沢水力発電所です。東北地方電気事業史を見ると明治41年当時の情報が「水力三居沢第1発電所600KW, 三居沢第2発電所30KW。」とあるので、2つ出来た際に新しい方を第1と名づけたようです。建設順ではなく、出力順になっているのが面白いですね。

古い第2発電所がいつまで残っていたのかは、東北地方電気事業史には書いてありません。ですが、その名残は今も見ることができます。

 

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写真奥に見えるレンガでできた坑門が旧発電所の水路跡ではないかと考えられます。また取水位置も5kWとうい低出力から考えて、現在の郷六ではなくもっと近い場所にあったのではないかと考えられるのですが、そこはまだ推測の域を出ません。

幸いなことに発電所の隣には東北電力のPR施設「三居沢電気百年館」があるので、そこに行って学芸員の方に詳しく聞いてこようかと考えています。

この発電所に関してはまだまだ語りたいことがたくさんあるのですが、今日はこの辺りで。