今回は東北電力白岩発電所の設備を上流から見ていきます。
取水堰は国道112号線と山形自動車道の立体交差の西側にすこし行った、寒河江川の本流に設けられています。意外と低い堰堤でしたが、近寄ることが出来なかったのが残念でした。この堰でせき止められた水は取水口から勢い良く水路に導かれ、その量は意外と多いものでした。
取水口を見た後は、導水路に沿って下っていきます。発電所の導水路は川と平行して等高線に沿って建設されるので、等高線を横切る自然の川と必然的に交差することになります。白岩発電所では国道121号線宮内交差点の脇を流れる熊野川との交差が存在しており、水路の交差に興奮する性の私にとっては外せないポイントでした。
現地に行ってみると、何の変哲もないパイプで川を渡っていました。しかし「明治時代にボルト止めパイプなんてあるわけない!!」ということで初期の構造物の痕跡を探した所、川の中に旧橋脚の基礎を発見。そしてパイプとの接続部分だけコンクリートでそれ以外は石積みという部分も確認できました。なので、昔は鉄桁の水路で川を渡っていたのではないかと思います。本格的な鉄筋コンクリートの利用は明治44(1911)年運転開始の石岡第一発電所まで待たなくてはなりませんので、橋脚の間隔や水路の幅からして鉄桁だったのだろうと推測しました。
熊野川と交差した導水路は国道121号線を山側にアンダーパスしていきます。実はこの道を6回ほど通ったことがあるのですが、今まで導水路に気づいていなかったのは不覚でした。まだまだ修行がたりないようです。
山側に移った導水路は、白岩の集落に入る前にトンネルへ変わります。そしてトンネルを3つ抜けた先が、なんと寒河江市立白岩小学校の敷地の中なのです!
導水路が真ん中を横切る小学校とは、なんとも珍しく羨ましい立地です。校舎と体育館・プールの間に導水路があるため、全校集会や水泳の授業の度に導水路を渡るのです!この学校の生徒の何人かは、後年発電所マニアとなったことでしょう。え、ならない?
小学校の中という特殊な立地に目が行きがちですが、水路構造物も「石張り」という年季を感じさせるものとなっています。
小学校の敷地の端には発電所の上部構造物であるヘッドタンクと余水吐きがあります。そこからすぐに水圧鉄管に入り、水車を回して発電しています。
この配置は100年以上変化していません。水圧鉄管の脇を登る階段も角が丸くなり、流れた時の長さを物語っています。
発電所が先か小学校が先かは定かではありませんが、この白岩発電所は私達の産まれるより前から登下校する小学生たちの喜怒哀楽を見てきたのでしょう。人と発電所の距離がとても近い、見ていて穏やかな気持になるような発電所でした。