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東京電力沼上発電所

今回は福島県にある東京電力沼上変電所についてご紹介します。

この発電所は「日本三大疎水」の一つである安積疎水が中山峠を抜ける際の落差を利用し電気を得る、比較的規模の小さな発電所です。

しかし、この発電所は日本で初めて11 kVの送電電圧で郡山市まで送電を行っていた、日本の高圧長距離送電の嚆矢となった場所です。

明治32(1899)年に郡山絹糸紡績株式会社によって建設されました。その当時の出力は300 kWで、この電力を約20 km離れた郡山市にある紡績工場や化学工場に供給していました。現在は設備更新により2100 kWまで出力が増強されています。

沼上発電所が使用する水は、安積疎水によって猪苗代湖から取水されています。そして国道49号線と交差すると中山峠をトンネルで通り抜け、ちょうど地表へ顔を出す地点から五百川へ向けての落差を利用して発電を行っているのです。

さて、沼上発電所の外観を見ていきましょう。発電所建屋は近年改築されたようで、きれいな外観をしています。水圧鉄管の上にある水門には「東京電力」「沼上発電所」の文字が見えます。これはかなり目立つため、磐越西線に乗車していても気づくことができます。

左にある滝は、水路トンネルから出てきた安積疏水によって作られたものです。

 

 

建屋の下に近づいてみると、水が出ておりどうやら稼働中のようです。耳をすませば50Hzの唸りも聞こえてきます。

発電所のすぐ下流には堰があり、下流にある東京電力が所有している竹之内発電所の取水口となっていました。落差を余すことなく使い切るという思いが伝わってきますね。

明治の時代に11kVで送電を開始した沼上発電所ですが、今では設備更新を重ね33kVで送電を行っているようです。

猪苗代湖の水を使って郡山盆地を発展させるための安積疏水が、電力という新時代のエネルギーをも生み出して郡山の産業振興を助けたというお話しでした。