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東京オートサロンに行ってきた話

 1月12日に、幕張メッセで開催された東京オートサロンに行ってきました。その中でも気になった車両の感想を3つ書いて行きたいと思います。

1. マツダ3

 東京オートサロンは、チューニングカーの祭典という側面が色濃いイベントです。しかし、近年企業の出展ブースも充実してきており、特にマツダは新型マツダ 3(日本ではアクセラで販売中)の本邦初公開の場としました。

流麗な曲面を描くマツダ3 ハッチバック

 このマツダ3は、次世代のデザインと 技術を牽引するモデルとして登場しました。まるでモーターショーのコンセプトカーのような佇まいに加えて、世界初となる圧縮着火エンジンSKYACTIVE-Xの搭載が予定されています。

 デザインの素晴らしい箇所を挙げるとすれば、フロントフェンダーからドアパネルを優雅に横断する局面と、強く絞り込まれている凹面です。プレスラインに頼らない有機的な造形は、これまでの日本車と一線を画す印象を与え、大胆な凹面はヨーロッパ車とも違うマツダ独自の美学が現れています。できることなら購入したいクルマです。

ハッチバックはお尻がいい。
2. シビック バーサタイリスト

 ホンダ車の純正オプション品を開発し、スポーツブランド「Modulo」を運営するホンダアクセスも出展していました。

 私の目を惹いたのが「シビックバーサタイリスト」コンセプトで、低く構えたかっこよさが特徴のハッチバックモデルを流行りのクロスオーバースタイルにしたものです。フェンダー部を明るいシルバーとしているのが軽快感を出していますね。そして黒いルーフが全体を引き締めていてスマートな印象を受けました。

フロントグリルがメッキではなくシルバー塗装なのが特徴です。
車高もハッチバックと比較して上がっていました。
バンパーに埋め込まれた大型フォグランプも、SUVらしさの演出に一役買っています。

 ちなみに「バーサタイリスト」とは、なんでもこなせるスマートな人間という意味があるそうです。多芸な人ということで、都市部からちょっとした未舗装路まで走れるかっこいいクルマというコンセプトを体現している名前だと思います。

 と、ここまでべた褒めしていますが、当然ながら世界で一番かっこいいクルマは、自分が運転するシビックハッチバックだと思っています。猫を飼っている人は共感してくれるかもしれませんが、他人の猫をどんなに可愛いと思っても、自分の猫がやはり一番かわいいのです。クルマだって同じです。

 「主観にすぎない」「他にもっと優れたクルマだってあるだろう」「そもそもノーマルから外観いじってないよね?」という批判もあるでしょう。それはそうです。でも、自分のクルマがかっこいいと確信できるからこそ、他のクルマのいいところを手放しで褒めることができるのです。

3. 神電 七

 最後に、電動レースバイク「神電 七」について書こうと思います。これは伝統のマン島TTにおけるTT Zeroクラスに出場し、見事5連覇を成し遂げたマシンです。マン島TT(ツーリスト・トロフィー)とは、アイリッシュ海に浮かぶ小さな島で行われる100年以上の歴史を持つ公道レースです。一周60kmの狭い公道を、トップカテゴリーでは平均時速200km/h超を保って6周も走るので、超人的な精神力が求められます。 排ガスゼロのマシンで争われるTT Zeroクラスは 、1周のみのタイムトライアル形式です。

カウルが外され内部構造がよくわかる「神電 七」

 電動バイクとはいえ、最高速度は200km/hを軽く超えるマシンですから、モータも大きいものが使われています。インホイールモータでないのは、バネ下重量を軽くしてサスペンションの動作を軽快にするためでしょう。電動化されても、チェーンによって後輪を駆動している部分に親近感が湧きます。

モータは車体に取り付けられる。剥き出しで固定されたアース線が良い。
モータ軸から上にオフセットされた位置にドライブスプロケットがついている。

 スイングアームはモータのスペースを確保するために大きく湾曲しています。その昔2stエンジンが主流だった頃、排気チャンバーとの干渉を避けるために生まれたガルアームを彷彿とさせますね。大きな違いは、神電がカーボン製だということでしょうか。軽量化を狙い、フロントフォークもカーボンでできていました。

モータを避けて大きく湾曲したスイングアーム。
NSR500(1989)のスイングアーム。チャンバーを避ける造形が瓜二つ。

 バッテリー・制御回路・モーターも熱を持ちますから、それを冷やすための巨大なラジエターが前部についています。内燃機関と違って冷却水温が低いので、出力の割には面積が広く取られています。これは燃料電池車と共通する特徴ですね。

2系統のラジエータが、大きく場所をとっている。
4.最後に

 当日はすべての展示ホールを回ってきたので、かなりの距離を歩きました。同行者のアプリによれば、10km 以上歩いたとか。

 それと、チューニングショップやアフターパーツメーカーが多いこともあり、商品をその場で購入したり、個人でも商談に移れるようにしてある出展者が多かったのが印象的でした。

 今回初めて「クルマ好きの祭典」へ行きましたが、来年もまた参加したいと思っています。

燃料電池車「クラリティ FUEL CELL」試乗レポート 運転編

前回に引き続き、ホンダの燃料電池車であるクラリティ FUEL CELLのレポートです。今回は実際に運転した感想をレポートしていきます。

オプションのレザーシートに着座してみると、正面の大きな液晶画面に映し出された速度計とモーターの力行と回生を示す半円のバーグラフが現われます。また、フロントウィンドウ下部には速度計が投影され、少ない視線移動で現在の車速を確認することができます。

コンソール上のシフトボタンにはP, R, N, Dの4つのポジションがあり、いずれかを押すと表示画面上へ文字が表示されます。後退のけでRシフトに入れることが可能です。電気モーターで走る燃料電池車は変速という概念がないので、普通に走行している分にはシフトポジションを気にする必要はありませんでした。

コンソールにはSPORTモードがあり、このボタンを押すとアクセルの踏み込みに対してより出力の変化が鋭く対応します。また、アクセルを放したときの回生も通常より強くかかり、前へ荷重を移動させて気持ちよくコーナーに入ることが可能です。しかし、モーターがあまりに鋭敏に右足の動きに反応するため、よほど気をつけないと加速と減速が小刻みに入り交じり乗り心地が悪化してしまいます。狭い峠道を下る場面では重宝しました。

今回試乗したルートですが、ホンダカーズ台原店を出発したのち国道48号線を西へ向かいました。そこから北環状道路へ進み、途中芋沢の小さな峠を越えて国道457号線へ。また途中から大國神社脇へ逸れて、そのまま舗装林道を通過して大倉ダムまで抜けて定義如来で撮影タイムをとりました。

    • 街中~40km/h程度
      クラリティにはブレーキホールド機能があり、停止中は自動的にブレーキを保持しアクセルペダルを踏むと解除してくれるため、赤信号に頻繁に止められる市街地では大変便利でした。発進から息継ぎも不快な振動もなくスルスルと加速する感覚は、どんなに高級な内燃自動車でもまねできない上質なフィーリングで感動しました。一方で、少々の段差では突き上げるような感触がありました。それほど衝撃は大きくなく、一回で収束する揺れなのですが、これは1.9tにも及ぶ車重を受け止めるために足回りを固めた結果でしょう。狭い路地にも入りましたが、1875mmの車幅がありながらAピラーからボンネット先端までの長さが短くダッシュボードの位置も低いため、車幅感覚の把握は容易でした。

    • 郊外~6okm程度
      まず特筆すべきは車内の静粛性です。この速度になるとモーターのノイズはほとんど目だたないうえ、相対的に大きくなるロードノイズも非常に小さく楽に会話をすることができました。この速度域から、クラリティの持つハンドリングの良さが際立ってきます。まるでハンドルの中立が保たれているかのように、直進安定性が素晴らしいです。そこからハンドルを切っていっても、車重を全く感じさせない軽やかさと正確性で自在にクルマの向きを制御できて「思うまま操れる」という言葉のままのハンドリングでした。しかし、この速度域でも路面からの僅かな突き上げを感じることがありました。
    • 自動車専用道~80km/h程度
      高速道路こそクラリティの持つ車体とサスペンションが真価を発揮する場面だと感じました。60km/hから80km/hまで苦もなく加速し、さらに少し上の速度域でも非常に静かに走行できるので、長距離を移動したときの疲労は他のクルマと比較しても小さいでしょう。低い位置に抑えられたダッシュボードは前面視界の拡大に繋がり爽快感がありますが、高速走行での安心感も同時に両立しています。一般道では堅さが目立つ印象を受けたサスペンションですが、80km/hからはどんな衝撃も一回の揺動でいなし、常に安定した接地感を伝えてくる大変優秀な足回りであると感じました。

【まとめ】
今回ホンダの燃料電池車であるクラリティ FUEL CELLに試乗した結果、長距離を快適に移動できるグランドツーリングカーとして利用するのがこのクルマのもっとも優れた部分を味わえるだろうという感想を持ちました。事実、ホンダは燃料電池車がバッテリー式電気自動車よりも航続性に優れる点をいかして、長距離都市間輸送に焦点を当てているようです。もちろん街中で大人4人が乗るセダンとして何の不便も感じず利用できますし、それを可能としたパッケージが実現するということが、燃料電池車普及へ向けたステップがまた一つ進んだことを感じさせてくれました。

今後水素の効率的な生産・販売インフラがさらに整備された暁には、クラリティでめいっぱい遠出してみたいと感じさせてくれるクルマでした。

蛇足:水素ステーションに行ったのですが、日曜だったので閉まっていました。充填作業を見たかったのですが、残念。

燃料電池車「クラリティ FUEL CELL」試乗レポート 外観・装備編

今回は毛色を変えて、クルマのお話しです。

宮城県では自動車ディーラーに補助を出すことで、次世代の自動車と呼ばれる水素燃料電池車の貸し出しを行っています。排気ガスを出さず、走行時に出てくるのは水だけというエコカーを、4時間4,000円・6時間5,000円という価格で借りることができるのです。現在トヨタ・MIRAIが723万円、ホンダ・クラリティ FUELL CELLが766万円(リース販売)ということを考えると、これは破格と言ってもよい値段です。借りるにあたり複数の条件はありますが、これは一度乗っておきたいということで後輩と一緒に運転してきました。その時の感想をまとめていきたいと思います。

私が今回借りたのはホンダ・クラリティ FUEL CELLです。カテゴリとしては、高級セダンに分類されるでしょう。しかし、シビックセダンと同じように斜め前から見るとクーペのように見える流麗なルーフラインが特徴的で、先進的な雰囲気をまとっています。また、燃料電池車は大きなラジエータが必要なために巨大なグリルを設けたりしますが(MIRAIがいい例)、クラリティは前面開口部をいたずらに大きく見せないデザインとなっています。ちなみに、なぜ大きなラジエータが必要かというと、燃料電池セルの作動温度はガソリンエンジンほど高くならないため、冷却水温度が下がる分単位面積当たりの冷却効率が下がるからです。

ガソリン車と異なる部分としては、フロントフェンダー上部に燃料電池セルで反応した後の空気を排出するエアアウトレットがあるのが特徴的です。

ボンネットを開けてみると、今回からフロントボンネット内に搭載された燃料電池スタックがお出迎えしてくれます。カバー前部からフェンダー上のアウトレットへパイプが伸びているが確認できます。

興味深かったのが水素タンクの充填期限シールです。法律で15年間だけ使用できると決まっているので、この車体に搭載されるタンクは16年製だとういことがわかりますね。

燃料電池から排出される水の出口は、後部左側の奥にあります。ホンダの燃料電池スタックはトヨタのものに比べて作動温度が高いため、発生する水分の多くが気体となるので液体の水がドバドバでてくるといった感じではなかったのが印象的でした。ついでに写っているリヤのサスペンションアームは、軽量化のためすべてアルミ鍛造製になっています。

もう一つ外見で特徴的な部分は、後輪の一部を覆うスカートでしょうか。初代インサイトを思い出しますね。こちらはタイヤの前面まで回り込むものではありませんが、下半分は後輪前部から導入したエアカーテンを使って空気抵抗を下げているようです。

次に、内装を見ていきます。ダッシュボードは横に直線が入っており、解放感を強調するデザインとなっています。センターコンソールは上段にシフトボタンがあり、その下にはスマートフォンや小物を置けるトレイが設置されていて、うまく空間を利用しているなと感じました。特に下の小物入れのデザインは秀逸で、すぐ近くにUSB端子やHDMI端子があり、デバイスを接続しつつも安定した状態で置くことができるようになっているのはすごく便利ですね。エアコンは左右で温度が選べる仕様となっています。

運転席のシートはオプションのレザーだったのですが、腰と太ももを受け止めてくれて安心して座れました。正直この価格帯のクルマの座席に座ったことがほとんどないので、ここは自信をもって書けない部分です。シートは電動で、二つのプリセットポジションが選べるようになっていました。シートヒーター付きは寒い場所では重宝しますね。

後部座席ですが、基本大人2人がゆったり移動できて、緊急時に3人掛けにできるといった感じでした。この点MIRAIの後部座席はは2人と割り切っていますから、本当に「いつも乗るセダン」として使えるのという点ではクラリティに分がありますね。FFではありますが、剛性確保のためかセンタートンネルがあります。また、後部座席ではフロントシート下につま先が入るので、ゆったりと座れました。座席下と背面に二つの水素タンクがあるのですが、その存在を全く感じないパッケージングでした。

面白いのが後席上部に設けられた覗き窓です。リヤガラスが寝ているため、後方の視界を確保するために工夫がなされています。

トランクを開けると水素タンクの張り出しが目立ちますが、容量は同社のセダンであるアコードと同等なようです。大人2人が普段使いするには十分なスペースをもっています。

 

次回からは運転のレポートに移りたいと思います。