関西電力木曽幹線 恵那市の分岐

 今回の旅の同行者と合流した私が最初に向かったのは、恵那市にある関西電力木曽幹線の大井発電所への分岐構造物です。別れた送電線が向かう関電大井発電所は、我が国初の本格的な重力式コンクリートダムを用いた水力発電所で、建設当時は本邦屈指の出力を誇りました。現在でも最大3万2千kWを発電する能力を持ち、関西圏の消費を支えています。大井発電所近辺の区間は大阪電灯株式会社が建設しており、大正年間に建設されて御年100年を超えるかという構造物です。

右方向が大井発電所への分岐。背の小さい鉄塔が建ち並んでいるのは賑やかでかわいい。

 さて、上の写真には現役の施設にしては不自然な箇所があるのですが、見つけることはできましたか?

分岐方向を見たアングル。あれ、手前の鉄塔の様子がおかしいぞ?

 同行者に言われるまで気づかなかったのですが、手前側のジャンパ線が取り外されていました。これがないと、写真の手前側に電気を送れません。
 まさか、この分岐設備が廃止されてしまうのではないか…と心配していた所、鉄塔の足元にジャンパ線が留められているのを見つけました。

外されたジャンパ線は、足元にまとめてあった。

 注意深く接続部分が地面につかないようになっていたので、もう一度つけ直すことを考えているのではないか、と話しながら次の場所に移動しました。

 途中落合ダムの脇の鉄塔が建て替えられてしまい気落ちしたものの、近くにダム建設時のものと思われる吊橋をみつけて興奮したりと、順調に旅程を消化していきます。

渋くて好ましいつり橋。村瀬橋というそうだ。

 そして、賤母発電所に向かう賤母線の原型鉄塔を撮影していたときに、外されたジャンパ線の謎が解けました。

賤母線のNo.37鉄塔。昭和8年から建っている原型だ。

 遠くの山肌に林立する送電鉄塔を何気なく撮ったところ、その日の夜に画像を確認していた同行者が、建て替え作業をしている木曽幹線の鉄塔を見つけたのです。

撮ったときは「壮観だ……これぞ電源地帯」としか考えていなかった。
よく見たら、画面中央で原型鉄塔の隣に近代的なデザインの鉄塔が建てられている。

 
 分岐構造物のジャンパ線が外されていたのは、この建て替え作業に際して電気を遮断するためだったんですね。
 大正時代から木曽の地に立つ鉄塔が建て替えられ、次の100年を担う鉄塔へ役目を譲る世代交代を見ることができました。

「関西電力木曽幹線 恵那市の分岐」への2件のフィードバック

  1. パワフルな取材に感心して拝見しました。
    ところで4月に所用で木曽幹線31号付近を通った時、
    ハシゴや道具入れなどの「電工さんグッズ」が塔上にあり、
    もしかしたら100年を目前にして解体か?と危ぶんでいたのですが、先日通りかかったら無事でホッとしました。
    ただ記事にあるように、建て替えが進んでいるようですね。
    美しい31号が100年を迎えられるように祈るばかりです。

    1. くえびこ 様
      木曽幹線の情報ありがとうございます。
      ちょうど点検・維持作業のタイミングでご覧になったのでしょうね。
      末永く現役であってほしいものです。

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