燃料電池車「クラリティ FUEL CELL」試乗レポート 運転編

前回に引き続き、ホンダの燃料電池車であるクラリティ FUEL CELLのレポートです。今回は実際に運転した感想をレポートしていきます。

オプションのレザーシートに着座してみると、正面の大きな液晶画面に映し出された速度計とモーターの力行と回生を示す半円のバーグラフが現われます。また、フロントウィンドウ下部には速度計が投影され、少ない視線移動で現在の車速を確認することができます。

コンソール上のシフトボタンにはP, R, N, Dの4つのポジションがあり、いずれかを押すと表示画面上へ文字が表示されます。後退のけでRシフトに入れることが可能です。電気モーターで走る燃料電池車は変速という概念がないので、普通に走行している分にはシフトポジションを気にする必要はありませんでした。

コンソールにはSPORTモードがあり、このボタンを押すとアクセルの踏み込みに対してより出力の変化が鋭く対応します。また、アクセルを放したときの回生も通常より強くかかり、前へ荷重を移動させて気持ちよくコーナーに入ることが可能です。しかし、モーターがあまりに鋭敏に右足の動きに反応するため、よほど気をつけないと加速と減速が小刻みに入り交じり乗り心地が悪化してしまいます。狭い峠道を下る場面では重宝しました。

今回試乗したルートですが、ホンダカーズ台原店を出発したのち国道48号線を西へ向かいました。そこから北環状道路へ進み、途中芋沢の小さな峠を越えて国道457号線へ。また途中から大國神社脇へ逸れて、そのまま舗装林道を通過して大倉ダムまで抜けて定義如来で撮影タイムをとりました。

    • 街中~40km/h程度
      クラリティにはブレーキホールド機能があり、停止中は自動的にブレーキを保持しアクセルペダルを踏むと解除してくれるため、赤信号に頻繁に止められる市街地では大変便利でした。発進から息継ぎも不快な振動もなくスルスルと加速する感覚は、どんなに高級な内燃自動車でもまねできない上質なフィーリングで感動しました。一方で、少々の段差では突き上げるような感触がありました。それほど衝撃は大きくなく、一回で収束する揺れなのですが、これは1.9tにも及ぶ車重を受け止めるために足回りを固めた結果でしょう。狭い路地にも入りましたが、1875mmの車幅がありながらAピラーからボンネット先端までの長さが短くダッシュボードの位置も低いため、車幅感覚の把握は容易でした。

    • 郊外~6okm程度
      まず特筆すべきは車内の静粛性です。この速度になるとモーターのノイズはほとんど目だたないうえ、相対的に大きくなるロードノイズも非常に小さく楽に会話をすることができました。この速度域から、クラリティの持つハンドリングの良さが際立ってきます。まるでハンドルの中立が保たれているかのように、直進安定性が素晴らしいです。そこからハンドルを切っていっても、車重を全く感じさせない軽やかさと正確性で自在にクルマの向きを制御できて「思うまま操れる」という言葉のままのハンドリングでした。しかし、この速度域でも路面からの僅かな突き上げを感じることがありました。
    • 自動車専用道~80km/h程度
      高速道路こそクラリティの持つ車体とサスペンションが真価を発揮する場面だと感じました。60km/hから80km/hまで苦もなく加速し、さらに少し上の速度域でも非常に静かに走行できるので、長距離を移動したときの疲労は他のクルマと比較しても小さいでしょう。低い位置に抑えられたダッシュボードは前面視界の拡大に繋がり爽快感がありますが、高速走行での安心感も同時に両立しています。一般道では堅さが目立つ印象を受けたサスペンションですが、80km/hからはどんな衝撃も一回の揺動でいなし、常に安定した接地感を伝えてくる大変優秀な足回りであると感じました。

【まとめ】
今回ホンダの燃料電池車であるクラリティ FUEL CELLに試乗した結果、長距離を快適に移動できるグランドツーリングカーとして利用するのがこのクルマのもっとも優れた部分を味わえるだろうという感想を持ちました。事実、ホンダは燃料電池車がバッテリー式電気自動車よりも航続性に優れる点をいかして、長距離都市間輸送に焦点を当てているようです。もちろん街中で大人4人が乗るセダンとして何の不便も感じず利用できますし、それを可能としたパッケージが実現するということが、燃料電池車普及へ向けたステップがまた一つ進んだことを感じさせてくれました。

今後水素の効率的な生産・販売インフラがさらに整備された暁には、クラリティでめいっぱい遠出してみたいと感じさせてくれるクルマでした。

蛇足:水素ステーションに行ったのですが、日曜だったので閉まっていました。充填作業を見たかったのですが、残念。

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